財務総合政策研究所

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フィナンシャル・レビュー
平成23年(2011年)第4号(通巻第105号)

平成23年3月発行

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<特集>地方財政制度の経済分析

成田康郎財務総合政策研究所研究部長責任編集

序文 [960kb,PDF]

成田 康郎

(財務総合政策研究所研究部長)

地方税の偏在性に関する要因分析

要約(日本語)要約(英語) 本文[1.5mb,PDF]

�T.はじめに

�U.道府県税の偏在性

�V.道府県税の偏在性に関する税目別寄与度分解

�W.市町村税の偏在性

�X.まとめ

小林 航

(千葉商科大学政策情報学部准教授)

岡部 真也

(財務総合政策研究所研究部研究員)

地方交付税のリスクシェアリング機能と地方公共団体の歳出平準化行動

要約(日本語)要約(英語) 本文[1.4mb,PDF]

�T.はじめに

�U.先行研究と分析の枠組み

�V.実績値での地方交付税による結果

�W.仮想的な地方交付税による平準化度合い

�X.結論

岡部 真也

(財務総合政策研究所研究部研究員)

地方交付税の財源保障機能 −中立性と妥当性の検証−

要約(日本語)要約(英語) 本文[1.8mb,PDF]

�T.はじめに

�U.財源保障の仕組み

�V.基準財政需要額の中立性

�W.補正係数の妥当性

�X.おわりに

石田 三成

(小樽商科大学学術研究員)

小林 航

(千葉商科大学政策情報学部准教授)

河川・道路行財政の政府間機能配分 −スピルオーバー対策の観点から−

要約(日本語)要約(英語) 本文[1.1mb,PDF]

�T.はじめに

�U.河川・道路管理の経済学

�V.河川管理政策

�W.道路管理政策

�X.おわりに

小林 航

(千葉商科大学政策情報学部准教授)

石田 三成

(小樽商科大学学術研究員)

地方債協議制度の経済分析

要約(日本語)要約(英語) 本文[1.6mb,PDF]

�T.はじめに

�U.地方債協議制度と地方債規制

�V.地方債規制の経済分析

�W.協議制移行の経済分析

�X.不同意債未発行の要因:決算統計データを用いた分類

�Y.結論

小林 航

(千葉商科大学政策情報学部准教授)

大野 太郎

(財務総合政策研究所研究部研究官)

地方財政制度の国際比較

要約(日本語)要約(英語) 本文[1.5mb,PDF]

�T.はじめに

�U.地方行政制度と地方財政の概観

�V.地方税制の国際比較

�W.財政調整制度の国際比較

�X.地方自治体の財政規律の国際比較

�Y.終りに

平川 伸一

(関東財務局甲府財務事務所長)

御園 一

(内閣府政策統括官(経済財政運営担当)付参事官(経済見通し担当)付参事官補佐)

岡部 真也

(財務総合政策研究所研究部研究員)

<特別寄稿>

  財務状況把握の財務指標と地方財政健全化の判断指標

 要約(日本語)  要約(英語) 本文[3.2mb,PDF]

�T.はじめに

�U.行政キャッシュフロー計算書

�V.市町村財政の分析

�W.まとめ

 

土居 丈朗

(慶應義塾大学経済学部教授)

外山 昌毅

(慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程)

吉岡 大

(一橋大学大学院経済学研究科修士課程)

<特別寄稿>

  ソーシャルキャピタルと地域経済

   −アンケート調査による個票データを用いた実証分析−

 要約(日本語)要約(英語) 本文[1.9mb,PDF]

�T.はじめに

�U.ソーシャルキャピタルと地域活性化の実例研究

�V.地域におけるソーシャルキャピタルの現状

�W.地域の経済成長とソーシャルキャピタルの中期的な実証分析

�X.おわりに

 

酒井 才介

(前財務省主税局総務課(元財務総合政策研究所研究部))


《地方財政制度の経済分析》

地方税の偏在性に関する要因分析

小林 航 (千葉商科大学政策情報学部准教授)
岡部 真也 (財務総合政策研究所研究部研究員)

(要約)

本稿は,地方税の偏在性について,変動係数,タイル尺度,およびジニ係数といった代表的な指標を用いてその時系列的な推移を追うとともに,経済力指標との関係に関する分析や,税目別の寄与度分解を通じて,その変化の要因について考察する。また,2007年度に行われた税源移譲が地方税の偏在性に与えた影響についても分析する。

2000年代における道府県税の偏在性は,1960〜80 年代に比べると顕著に低下しているが,それは経済力の偏在性が低下したことに加え,道府県税と経済力の偏在性の乖離が縮小したことからも影響を受けている。地方税の偏在性を税目別に寄与度分解すると,道府県税については法人二税と個人住民税の寄与度が大きいのに対して,市町村税については固定資産税の寄与度が極めて高い。ただし,都市に限定すると,個人住民税や法人住民税の寄与度も高くなる。税源移譲の影響については,道府県税,市町村税ともに,総額の偏在性に対する個人住民税の寄与度を高める一方で,税率のフラット化により個人住民税自体の偏在性を縮小する効果も見られた。後者の効果は,道府県税よりも市町村税のほうが強く表れている。

キーワード:地方税,偏在性,税源移譲

JEL区分:H71,H73,H77

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《地方財政制度の経済分析》

地方交付税のリスクシェアリング機能と地方公共団体の歳出平準化行動

岡部 真也 (財務総合政策研究所研究部研究員)

(要約)

本稿では都道府県の地方税,地方譲与税,地方特例交付金等の合計額でみた税収の年度間変動のばらつきが,地方交付税によってどの程度平準化されているか(地方交付税のリスクシェアリング機能)を検証した。分析対象期間(2003 〜 2008年度)の平均でみると,地方交付税によって税収変動の約44* が吸収されていたが,この大きさは標準税収入に替えて実額の税収を用いて算出した仮想的な地方交付税額の平準化度合い(約75*)に比べると小さいものであった。こうした地方交付税制度による吸収の他にも,各地方公共団体の歳出平準化行動によって変動が吸収されており,なかでも異時点間の歳出平準化といえる純貯蓄での平準化が,平均すると地方交付税と同程度の平準化効果を持っていた。また,純貯蓄による平準化の内訳をみると,積立金の調整によって特に大きい効果が観察された。

キーワード:地方税,地方交付税,リスクシェアリング,歳出平準化,基準財政収入額

JEL区分:H71,H72,H77

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《地方財政制度の経済分析》

地方交付税の財源保障機能 −中立性と妥当性の検証−

石田 三成 (小樽商科大学学術研究員)
小林 航 (千葉商科大学政策情報学部准教授)

(要約)

地方交付税による財源保障は,地方公共団体に特定の政策意図を押し付けないという中立性,地方公共団体が恣意的に操作のできない指標を算定の基礎として用いるという客観性,個々の団体の財政需要や財政力を的確に測定するという妥当性,算定は極力簡素であるべきという簡素性といった諸原則を満たすことが要請される。これらの諸原則のうち,中立性と妥当性との間には一定のトレードオフの関係があると考えられる。

本稿では,投資的経費のうち道路橋りょう費,河川費,農業行政費の3 つの経費を中心として地方交付税による財源保障が中立性を満たしているかを制度的側面から明らかにし,妥当性をどこまで満たしているのかを決算データ等を用いて検証することを試みた。その結果,事業費補正以外の補正係数(寒冷補正と投資補正)は一部を除けば人口,河川延長,道路延長,田畑等の面積といった中立的な指標から構成されており,基準財政需要額をほとんど増やすことなく妥当性を満たす働きをしていたことが示された。それに対して,事業費補正は中立的ではないうえに,基準財政需要額を大幅に積み増した割に妥当性をそれほど満たしているわけではないことが示された。

2010 年から事業費補正は基本的に廃止され,単位費用により措置されることとなっている。本稿の結論より,事業費補正がなくともそれ以外の補正で妥当性は十分追求できることから,事業費補正の単位費用化は中立性と妥当性の両方の観点から正当化されると思われる。

キーワード:地方交付税,財源保障,中立性,妥当性,基準財政需要額,補正係数

JEL区分:H71,H72,H77

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《地方財政制度の経済分析》

河川・道路行財政の政府間機能配分 −スピルオーバー対策の観点から−

小林 航 (千葉商科大学政策情報学部准教授)
石田 三成 (小樽商科大学学術研究員)

(要約)

河川や道路といった地域間で便益がスピルオーバーするような地方公共財の供給方法として,経済学では(1)中央政府が直接供給する,(2)地方政府が供給し,中央政府は定率補助金で誘因を付与する,(3)地方政府間の交渉に委ねる,といった方法が提案されている。本稿ではスピルオーバーする地方公共財として河川および道路を取り上げ,我が国における河川および道路行財政制度がスピルオーバー対策の観点から見てどのように位置づけられるかを検討した。

河川および道路行財政制度の特徴として以下の3 点を指摘できる。(1)国と地方の役割分担については,国が直轄して供給する条件の一つにスピルオーバーに関連する条件が含まれており,スピルオーバー問題に対して一定の配慮が払われているといえるが,スピルオーバーとは関係なく国が直轄することも多いこと。(2)費用分担については,国と地方の費用分担はスピルオーバーの程度に関わらず国が一定の負担をしているが,地方間の費用分担は応益原則に即して運用できる制度が準備されており,河川では実際にそうした制度が活用されていること。(3)地域間交渉については,二級河川や補助国道および地方道では,地域間でその管理や費用負担に関する交渉が行われていることから,限定的ではあるが地域間交渉によるスピルオーバー対策も機能していることが挙げられる。

キーワード:道路,河川,スピルオーバー,地方公共財,国と地方の役割分担

JEL区分:H71,H72,H77

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《地方財政制度の経済分析》

地方債協議制度の経済分析

小林 航 (千葉商科大学政策情報学部准教授)
大野 太郎 (財務総合政策研究所研究部研究官)

(要約)

わが国では,2006 年度より地方債の協議制が始まった。これにより,個々の地方公共団体は国や都道府県と事前に協議はするものの,その同意が得られない場合にも地方債を発行することができるようになった。このことは地方債発行の自由度が高まったものと解釈できるが,そうした自由度増大の象徴ともいうべき不同意債は,施行から4年以上が経過した現在においても,いまだに発行されていない。本稿では,許可制から協議制への移行で本質的に何が変化したのかを明らかにするとともに,不同意債が発行されていない理由について理論的および統計的に考察する。

不同意債が発行されない理由としては,第1 に地方債充当率の上限値が十分に高いために何ら制約になっておらず不同意債を発行する必要がないこと,第2 に実質公債費比率が基準値を超えているため許可団体となっており不同意債を発行する資格がないこと,第3に充当率の上限規制を超えた起債については地方債の元利償還金に対する交付税措置がないため不同意債を発行するコストが高いこと,が挙げられる。なお,今後不同意債が発行される可能性があるとすれば,それは主に第3 の理由に直面している地方公共団体であるが,決算統計データからはそれに該当している団体は全国市町村の1割弱であることが確認された。

キーワード:地方債,許可制,協議制,地方債規制,交付税措置

JEL区分:H74,H71,H72

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《地方財政制度の経済分析》

地方財政制度の国際比較

平川 伸一 (関東財務局甲府財務事務所長)
御園 一 (内閣府政策統括官(経済財政運営担当)付
 参事官(経済見通し担当)付参事官補佐)
岡部 真也 (財務総合政策研究所研究部研究員)

(要約)

�@多くの国で,州・地方政府は,州・地方税を主要な財源として,教育や福祉関係の歳出を行っている(現金給付は連邦や州政府,現物給付は州・地方政府という役割分担が多い)。我が国は,国民負担に占める地方税の比率は相対的に高いものの,一般交付金や特定補助金を含めた地方歳入に占める地方税の比率は低く,一般交付金や特定補助金を原資に,土木,農林水産,商業,工鉱業などの歳出を行っている傾向が強い。

�A日本を例外として,単一制国家では,国・地方の課税ベースの重複は少ない。連邦制国家では,連邦と州の課税ベースの重複は多いが,連邦・州と市町村等との課税ベースの重複は少ない。日本を例外として,多くの国で自治体間の税率格差は大きく,地方自治体が自らの裁量で財源を調達し,自らの歳出に対して責任持つという,自治体の行政サービスの質とそれに対する住民の評価をつなげる機能を有していることが考えられる。

�Bアメリカを除き,財政調整制度を通じて財政力の格差を縮小する仕組みが存在する。しかし,住民一人当たりの歳入を大幅に逆転するような調整を行っているのは日本と,ドイツにおけるベルリンなどの都市州に対する調整しかない。

�C多くの国で,国民負担抑制の観点から,政府全体としての地方歳出をコントロールする仕組みが存在する。日本では地方債発行のコントロールの仕組みなどは存在するが,地方交付税等により財源保障する仕組みのなかで,地方歳出に対する制度的な規律は限定的なものとなっている。

キーワード:国際比較,地方税,財政調整,財政規律

JEL区分:H71,H74,H77

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《特別寄稿》

財務状況把握の財務指標と地方財政健全化の判断指標

土居 丈朗 (慶應義塾大学経済学部教授)
外山 昌毅 (慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程)
吉岡 大 (一橋大学大学院経済学研究科修士課程)

(要約)

本稿では,財政融資のための財務状況把握における指標として活用されている行政キャッシュフロー計算書と,地方財政健全化法に基づく健全化判断比率の様々な指標間の関係を学術的に分析した。行政キャッシュフロー計算書は,既存の決算統計を意味ある形で組み替えて,行政収支,投資収支,財務収支の各部門に区分して,財務状況を把握できるようにしている,本稿での分析の結果,行政経常収支率は基礎的財政収支と強い正相関を持つ一方,債務償還可能年数は他の指標と独立して観察する必要があることなどがわかった。また,2001 年度〜2008 年度の市町村のパネル分析からは,税収増や人件費抑制が行政経常収支率の改善に寄与していること,特に超過課税や合併を期に行政経常収支率が改善したとの結果が得られた。財政の持続可能性と密接に関連する基礎的財政収支においても,税収増や人件費抑制が改善のために重要であることが示された。本稿の分析を通じて,財政融資のための財務状況把握で用いられている行政キャッシュフロー計算書が,健全化判断比率とともに,学術的にも有用な指標であり,今後さらなる活用が期待される。

キーワード:地方財政,財政投融資,地方向け財政融資,財務状況把握,地方財政健全化法

JEL区分:H74,H77,H63

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《特別寄稿》

ソーシャルキャピタルと地域経済−アンケート調査による個票データを用いた実証分析−

酒井 才介 (前財務省主税局総務課(元財務総合政策研究所研究部))

(要約)

近年の厳しい地域経済の情勢の中、地域を活性化させる要素として「ソーシャルキャピタル」と呼ばれる概念が注目を集めてきている。「ソーシャルキャピタル」とは、Putnam(1993)によれば「人々の協調行動を促すことにより社会の効率性を高める働きをする信頼(trust)、規範(norm)、ネットワーク(network)といった社会組織の特徴」と定義されている。本稿の目的は、「信頼」、「規範」、「ネットワーク」の3つの要素が地域経済にどのような影響を与えるか否かについて実証分析を行うことである。ソーシャルキャピタルの定量的な把握については十分な研究の蓄積が進んでおらず、そのための確立された手法は今のところ見られないが、ここでは内閣府(2002)及び内閣府(2005)で実施されたアンケートの集計結果(個票データ)を用いて、3つの要素に対応した指標を都道府県別に利用・作成し、クロスセクション・データによる回帰分析を行うこととする。

操作変数法を用いた重回帰分析の結果、2005年時点のデータによれば、規範は事業所増加率にプラスの影響を与えている一方でネットワークがマイナスの影響を与えているという結果が得られた。さらに、Barro Regressionにより中期的な経済成長率への影響について検証を行った結果、「広い」範囲での他人への一般的な信頼については当該地域の経済成長に対しプラスの効果を与えていた(ただし他地域に対するスピルオーバー効果はない)という結果を得た一方で、近所の人々、友人・知人、親戚への「狭い」範囲での信頼については隣接地域に対するマイナスの外部効果が観察された。

以上の結果は、日本の地域経済においてソーシャルキャピタルが持つ正の側面・負の側面を示唆しており、今後の地域経済復興策を考える上でも意義深いものであると考えられる。

キーワード:ソーシャルキャピタル、信頼、規範、ネットワーク

JEL区分:H41, R10

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